Nourrirが生まれるまでに私が経験した悩みや葛藤を、ここに記したいと思います。
 この記録が、同じような悩みを抱えている方の力になれたら嬉しいです。

出産と育児、私自身の心の変化

 結婚して半年後、私たち夫婦に、待望の赤ちゃんがやって来ました。ママになる喜びとともに、心の中には小さな不安もありました。

 最も戸惑ったのは、妊娠期に、性的なものに強い関心を持つようになったこと。体は順調だったものの、心の変化にひとり悩み、誰にも打ち明けられずにいました。

 そして迎えた出産は、私の想像をはるかに超える経験でした。酔って帰宅した夫に頼れない不満を抱えながら、一時帰宅と病院を行き来し、33時間の陣痛の末、吸引分娩で長女を出産しました。

「命を迎える奇跡の瞬間」

 しかし、そこから私の心の葛藤は始まったのです。

産後、そして心の葛藤

 産後の私は、体がボロボロの状態で、10メートル先のトイレに行くのもやっと。そんな中でも、赤ちゃんのお世話は待ったなしでした。

『母乳が出ない』

 たったそれだけのことが、私を深く追い詰めていきました。

「母乳が大事」
「母乳育児が理想」

 周囲の言葉がプレッシャーとなり、「私が諦めたらこの子はちゃんと育たない」と、思い込んでしまいました。そして、母乳を出すためにお餅を無理に食べ、マッサージにも通いました。それでも状況は変わらず、さらには、授乳中に得体の知れない不快感に襲われるように。

 この現象に「不快性射乳反射」という名前があると知ったのは、子どもが12歳になった後のことでした。当時それを知らなかった私は、

「私がおかしいのかもしれない」
「母性が欠落しているのかも」

と自分を深く疑い、ますます母親としての自信を失っていきました。

 その苦しみの中で、「子どもを産まなければよかった」とさえ思ってしまうことも。
 そして、そんなことを思う自分を「母親失格だ」と責め続け、誰にも助けを求められず、心を閉ざしていきました。

夫婦関係のすれ違い

 長女の誕生は、私たち夫婦の関係にも大きな影を落としました。私は当時ただ、わかってほしかった。「解決策」ではなく、「寄り添い」がほしかった。でも夫から返ってくるのは、正論ばかり。

 家の中にいるのに、心は遠い。そんな孤独感が積み重なり、「夫は私がピンチのときに支えてくれない人」そう思うようになり、心のすれ違いは深まっていきました。

流産と心の封印

 その後、2度の流産を経験しました。夫への気持ちは冷めたまま。でも、「2人目が欲しい」という気持ちを優先し、夫婦関係について深く考えることを避けました。
 そして、気持ちに蓋をし、割り切って日々を過ごしていました。

次女の誕生と長女との距離

 そして次女が生まれた後も、私は長女との関係に悩み続けました。長女にだけ厳しく接してしまったり、些細な行動にイライラしてしまったり…。

 そんな自分を受け入れることができず、「私のこの気持ちはいけないものだ」と思い、意識的に長女と距離を取るようになりました。

子どもが親から愛されていないと感じることが与える影響は十分に理解していたはずなのに、どうすることもできないと感じる。

「愛したいのに、愛せない。」
 
 その矛盾した気持ちが、ますます私を苦しめました。長女とただ距離を取ることしかできない自分に、罪悪感を抱きながらも、当時はどうしていいかわかりませんでした。

心の変化と気づき

 そんな中、私は心理学と出会い、心について学び始めました。そこで知ったのは、「どんな感情も感じていい」ということ。
 そして、その感情を認め、受け入れることで、深い安心感が得られるということでした。

 私が産後に感じた苦しみは、心の中の「子どもの部分」が助けを求めていたのだと気づきました。その子どもの心を理解し、感情を整理することで、私は次第に自分を許せるようになりました。

 自身の「子どもの心」を育てることは、実は子育てと同じこと。
 厳しさや正しさだけでは、人は本当の意味で育たないことを知りました。

すべての経験が成長の糧となる

 振り返れば、あのときの痛みも、孤独も、戸惑いも、すべてが私を育てるために必要だったのだと思えるようになりました。
 ここまで来るのに、5年かかりました。けれど、あの苦しかった日々があったからこそ、今、私は心から笑うことができています。

 困難に直面しても、自分を整える力がつき、揺れながらも、前を向いて進める自分になりました。

あなたへ

もし今、誰にも言えない痛みを抱えているなら。
うまくいかない自分を責めているなら。

どうか、心にそっと手をあててあげてください。

あなたは、ずっと一生懸命だった。
泣きたい夜も、誰にも見せずに乗り越えてきた。
うまくいかないのは、あなたがダメだからじゃない。

あなたの中にいる小さなあなたが、

「もっとわかってほしい」
「もっと安心したい」

そう願って、必死に叫んでいたから。

あなたの痛みには、理由がある。
あなたの迷いにも、意味がある。

 そして、どんなに心が傷ついても、あなたの中には、ずっと希望の灯りが消えずに灯っています。その灯りがある限り、あなたは、何度でも、やり直せる。

焦らなくていい。
比べなくていい。

 涙も、怒りも、戸惑いも、すべてが、あなたの大切な一部です。今のあなたを、そのまま抱きしめてあげてください。

 そこから、すべてが始まります。

 あなたが、自分を愛せるようになったとき、世界は、思っているよりもずっと、やさしく変わっていきます。